会場の味の素ナショナルトレーニングセンター |
次にロンドン・パラリンピックの射撃代表の田口亜希さんが,パラリンピックの歴史,成り立ちなどについて話してくださいました.第二次世界大戦で脊髄に損傷を負った人々を対象とした競技会として,1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で行われた競技会がパラリンピックの起源です.パラリンピックの父とされるグットマン博士の「失ったものを数えるな.残されたものを最大限に生かせ」というメッセージは,人生のさまざまな場面でいえることだと思いました.パラリンピックでは同一レベルの選手同士でフェアに競い合うために,専門家の診断によって,障がいの種類,部位,程度によってクラス分けが行われます.例えば田口さんの出場する射撃では,まず腹筋が使える/使えないから徐々に分類していくそうです.アスリートとして競技に打ち込むことによって機能の回復が見られるケースもあれば,障がいをごまかして出場する選手もいるために,分類した後も競技場だけでなく練習場においても専門家が目を光らせているそうです.田口さんが以前プレーした大会で,姿勢がいいなと思っていた選手がおり,彼女は優勝したが,優勝後のパーティーで酔っ払った後,立ち上がってプールに飛び込んでしまい,障がいをごまかしていたことが発覚した話を紹介されました.スポーツ界では,ドーピングや八百長などの問題が指摘されていますが,競技者として勝ちたいという欲をいかにコントロールしてフェアに競技に取り組むのか,そこには競技者以前の人としての品格が問われていると思います.さらに,田口さんはまだまだ日本では障がい者への理解が進んでいない部分があり,パラリンピックを一つのきっかけとして障がい者だけではなく,妊娠中の女性,高齢者など,全ての人がアクセスしやすいaccessibilityの高い快適な社会を目指して、、と締めくくっておられました.
この後は,他競技の方々とオリンピズムのキーワードとなる卓越(excellence),友情(friendship),敬意・尊重(respect)についてグループディスッカッションを経て各グループでのプレゼンテーションを行いました.
84名のオリンピアン,パラリンピアンの集合写真です. テニスからは杉山愛ちゃんと私が参加しました. |
今回の研修会をきっかけとして,私自身もオリンピアンとして何ができるのかについても考え,実行すべきことがあることに気づきました.2016年4月からは特別企画講義として「オリンピックから現代をみる」という科目を開きます.本学の皆さんにもさまざまな観点からオリンピックを見つめる機会になればと思っています.
*田口さんが紹介してくださったイギリスのテレビ局,チャンネル4のロンドンパラリンピックのプロモーション映像です.その迫力はまさにトップアスリートのものであり,映像で伝えられるメッセージ,「super human」という言葉を納得させるものになっています.
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