2015年6月28日日曜日

読書会報告:ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊』

「地球の科学」ほか担当の新正です。図書部で一緒に活動している経営学部の板橋雄大先生に、読書会の様子をゲスト執筆していただきました。



6月25日に今年度3回目の読書会が行われました。ファシリテーターを担当しました板橋です。今回のお題本は、ジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊』でした。

Amazonの歴史・地理ランキングにおいて、ジャレド・ダイアモンドの出した本が、現在の、1位、2位、4位、6位となっていまして、まさにベストセラー作家です。『文明崩壊』は上下巻に分かれた大著ですので、一回で全部は無理。今回は上巻のみをお題本としました。参加者は学生一名と教員三名と私の五人です。

図書館二階のリフレッシュ・スペースを使い、グアテマラ産の「究極のコーヒー」を味わいながらの読書会です。なお、後期には、「至高の紅茶」が提供される読書会を予定しています。もちろん、その回は紅茶と関連する本になります。

コーヒーが供されました!
さてさて、芳醇なコーヒーの香りに包まれながら読書会が始まった訳ですが、いきなりファシリテーターの度肝を抜くような展開になりました。一応、議論の種になるような資料も作っていたのですが、そんなものなくても参加者からは尽きない疑問と、コメントが出されました。

ファシリテーターとしては失格かも知れませんが、私もすぐに「議論の整理役」をほっぽり出して、議論に参加しました。「なぜ、過去の人は文明崩壊に最後まで気がつかなかったのか」、「自分達の文化圏の最後の1本の木を切り倒すとき、その人はどんなことを感じたのだろうか」、「なぜ、その文明の指導者達は、自分達の文明の存続ではなく、崩壊につながることが、ほとんど自明の決断をしたのだろうか」。

リフレッシュスペースでの開催
そうした疑問に、西洋の歴史から高津先生が、地学(氷河期や、気候変動について)から新正先生が、組織および人の行動原理から山口先生が切り込んできます。学生参加者も、負けじと食らいつきます。中には、我々も知らなかったような知識もあり、素晴らしい活躍でした。一人が答えを出せば、他の一人がさらなる疑問を投げかける。

まさに読書会らしい読書会で、私は楽しみながらも「これイベントにしたら十分お金取れるな」とか思っていたわけですが、やがて、リフレッシュルームには我々以外誰もいなくなり、楽しい読書会もそろそろ終了しなくてはいけません。

一応、読書会のまとめとして、結論めいたことを話し始める私ですが、誰も納得してくれません。「これ、下巻読んでもう一回読書会しましょう」、私以外の全員がそう結論して、私の最初のファシリテーターは終わりました。

ファシリテーターとしてはどうだったのかは分かりませんが、参加者が皆、下巻まで読みたいと思ったことは、読書会としては、大成功だったのだと思います。

皆さんも、こんな激論飛び交う読書会に参加してみませんか?お問い合わせは図書館カウンターまで。


P.S この記事を書いている6月27日に、EUが財政危機に直面するギリシャへの金融支援の延長を拒否しました。これで、ギリシャは国家の財政破綻(デフォルト)に陥る危険性が非常に高くなりました。

なぜ、ギリシャの人々は、財政破綻に至るまで状況を悪化させていったのでしょう。ギリシャの指導者達は、なぜ、財政再建ではなく、時間稼ぎを選択したのでしょう。EUの人々は、ギリシャの財政破綻がどのような影響を世界経済に及ぼすか分かっていないのに、なぜ金融支援の終了を決断したのでしょう。

イースター島の文明崩壊の道筋とあまりにも似たこの状況を見ると、我々の文明は、古代から本質的なところでは進歩していないのではないかと思いました。

参考:
読書会とBBQ」(2015年度第2回読書会の模様)
堺学長読書会『本日は、お日柄もよく』」(2015年度第1回読書会の模様)


2015年6月23日火曜日

【学問のミカタ】 もし梅雨という季節がなかったら…


「日本文学」担当の上野麻美です。

 じめじめと鬱陶しい梅雨の季節、からっと晴れた夏が待ち遠しく思われます。しかし、もし梅雨という季節がなかったら、日本文学はその独自性を失っていたのではないか、と私は思います。文字通りのウエットな国民性の本質的な部分がすっかり欠落するわけですから、当然、生まれる文学の傾向も大きく違っていたはずだと思うのです。
 
 しとしと降り続く長雨に降り籠められると、人は自ずと内省的になります。そんなとき、恋人や亡き人を思って詩歌を詠み、妄想に耽って物語を編む…。もし梅雨がなかったら生まれなかったのではなかろうか、と思われる作品は少なくありません。

 例えば『源氏物語』「帚木」の巻にある、俗に「雨夜の品定め」と呼ばれる場面を考えてみましょう。五月雨が降り続く梅雨の夜、主人公源氏を含む四人の男たちが、つれづれに恋愛談義を交わす有名な場面です。

 話はまず「女は上中下の三ランクに分けられるが、とりわけ中クラスに魅力的な女が隠れている」というコンセプトの提示で始まり、若い源氏に他の三人が過去の女性遍歴を語る、という趣向で展開します。まだ恋愛経験の少なかった源氏は三人の話に大いに刺激を受け、この場面は物語のその後の展開にも色濃い影を落とします。

  もし梅雨がなかったら「雨夜の品定め」は生まれなかった、と私は思います。降り続く雨で夜遊びにも出かけられず、暇をもてあました男たちが集う、という設定なくしてこの場面はなかったと断言します。もしこの日が晴れていれば彼らは恋人のもとを訪れるのに忙しく、野郎同士で恋バナする暇などなかったはずです。もちろん元カノを思い出すことなど微塵もなく、今カノのご機嫌とりに必死だったに違いありません。

  ……と、あらぬ妄想に耽っていると、研究室の窓の外も雨脚が強くなってきました。長雨のつれづれに思い出すのが元カレではない、という寂しい我が境遇が歎かれます。

 我が身世にふるながめせしまに…古歌がしみる梅雨の夕暮れです。

2015年6月22日月曜日

読書会とBBQ

「外国史I」ほかを担当している高津です。
6月5日(金)に読書会が開催されました。宇野常寛『リトルピープルの時代』(幻冬舎2015年)をネタ本として、村上春樹から平成ライダー、現代文学からサブカルチャーを事例に、現代日本の文化的状況、そこで生きていく私たちの実践のあり方について語り合おう、特に「40代のおじさん」という立場から、大学生である皆さんの意見を聞きたい・・・・と、楽しみにしていたのですが、残念ながらあまり多くの方々に参加いただくことができませんでした。ちょっと本が分厚かったか・・・・しかし、内容的にはとても興味深く、一気に読み通せる本なので、勇気をもって(?)チャレンジして欲しかったと思います。参加者の方々とは、本の内容を踏まえながら、自身のアニメやSNSの体験についても語り合うことができ、とても楽しく有意義な時間を過ごすことができました。参加者の方々に御礼を申し上げます。

6月14日(日)には、この読書会の出席者にも参加していただき、小金井公園でBBQを行いました。東京経済大学の留学生と日本人学生の交流イヴェントの一つです。こちらは(大変喜ばしいことに)50人近い参加者を得ることができました。私も10年ほど前にドイツに3年間留学していましたが、そのときにはドイツ人の学生さんたちに大変お世話になりました。今回はそのときの恩返しのつもりで参加しました。留学生、日本人学生の皆さんの双方にとって、楽しい交流の会となったのであれば嬉しいです(私自身はとても楽しく過ごしました)。今後も国際交流課の職員の方々、留学生チューターの学生諸君とともにこうしたイヴェントを開催していきますので、日本人、外国人を問わず、多くの友人を作って欲しいと思っています。

2015年6月19日金曜日

7月7日「人権論」ゲスト講師講義を公開します

徐京植先生ご担当の「人権論a」において下記の要領でゲスト講師による講義を行います。

日時:7月7日(火曜日)3限(13:00〜14:30)
講師:梓澤和幸さん(弁護士、山梨学院大学・教授)
場所:E001教室(5号館地下1階)

梓澤和幸さんは日本を代表する人権弁護士です。現代の私たちが直面するさまざまな人権をめぐる問題について、実務の経験を踏まえて話していただきます。

公開講義として行いますので、履修生以外の方の聴講を歓迎します。


【参考】
「人権論a」シラバス


2015年6月18日木曜日

センターコロキウム「没落の三つの感覚―大学の没落を中心に」

「地球の科学」ほか担当の新正です。

6月17日の夕刻に、1年ぶりのセンターコロキウムを開催しました。講演者は淑明女子大学韓国語文学科のクォン・ソンウ教授で今年の2月より客員研究員として、東経大に滞在されています。講演者を含め15名の参加を得ました。

演題は「没落の三つの感覚―大学の没落を中心に」ということで、韓国における社会・大学・文学の3つの没落の中でも、特に大学事情を中心にお話しいただきました。

大学の没落の要因として、
・オンライン講座、通信教育の普及
・大学進学人口の減少、さらに進学率の低下
・大学に対する資本の影響力の増大
・就職第一の文化
をあげられそれぞれについて、具体的な事例に即して詳細に話されました。例えば進学者の減少が目に見えている中で、就職に結びつく教育が求められ、学科として人文学や基礎的な自然科学が減らされつつあること、教員数の削減に関連して、非正規化が進んでいることなどを挙げられました。また、そのような状況下で学問的な後輩を育てるのが難しい、すなわち優秀な学生にも(人文学など「実学」的でない分野では)大学院に行くことを勧められず、頑張って勉強している学生に申し訳ないということでした。

終了後も多数の質問が出て、質疑応答で30分近く盛り上がりました。質疑応答の締めとして、それぞれの大学の使命として、研究型・職業訓練型の類型化が今後進むであろうという指摘に関して議論があり、日本の方が韓国の3倍近い人口があるので、その分(大学の)多様性を選択する余地があるのではないか、という指摘が印象に残りました。


講演者の紹介の労をお取りいただいた徐京植先生、通訳をしてくださった金成垣先生に厚く御礼申し上げます。また会議・お仕事の合間を縫ってご聴講くださった皆様、ありがとうございました。



2015年6月11日木曜日

「教養入門」ゲスト講師講義 池内了さん「科学の『いま』を考える」

「地球の科学」ほか担当の新正です。

6月3日(水曜日)の1・2限の「教養入門」に宇宙物理学者の池内了さんをお招きして、「科学の『いま』を考える」というタイトルで授業を行っていただきました。

まず、「大学とは何か?」というお話から講義を始められました。

大学とはどのように考えるかの考え方の方法を学ぶところであり、そのためには多様な分野の学問・文化を習得するのが第一で、それが教養であり、「科学」もその教養の一つである、ということです。

引き続いて「科学」を学ぶ意義について、現代社会を生きる我々にとって科学・技術は無縁では生きられないこと、それはなぜかを説明されました。

そして科学の二面性について、4つの軸からお話を展開されました。すなわち効用と弊害、文化のためか社会のためか、軍事利用と民生利用、単純系と複雑系。これらの対抗軸について、具体的な話題が展開されました。軍事研究は採算を度外視して研究費が使えるので、戦時中が最も研究の自由があった、と語る人もいた、という話など、印象に残る挿話がいくつもありました。

最後に科学者である立場から市民が科学(や科学者)とどのように付き合うか述べて講義を終えられました。

静かな語り口の中にも、時々はっとする批判的なつぶやきがあったりで、90分があっという間の授業でした。


個人的な感想ではかなり「大人」向けの内容で、入学直後の1年生がどのように受け止めてくれたかな?と思いましたが、授業終了時に書いてもらった感想シートには、多くの学生がそれぞれの思いを連ねていて感心しました(池内さんの記事を入学前に新聞で読んでいたので、講義を受けることができてうれしかった、という感想もありました)。


図書館の展示を見て聴講してくださった方も
いらっしゃいました。
本学図書館には池内さんの著書が40冊以上所蔵されていますので、講義の前後の期間展示していただきました(図書課のみなさま、ありがとうございました)。

講義終了後は、「教養入門」担当教員を含む若干名の教員で池内さんを囲んで昼食をとりつつ、歓談しました。こちらでも興味深いお話を伺うことができました。

「教養入門」は1年次1期配当の科目で、1限・2限にそれぞれ3クラスずつ開講し、3名の専任教員がローテーション方式で担当しています。今回はそれぞれの時限について3つのクラス合同での授業として行いました。

2015年6月4日木曜日

TKUサイエンスカフェ「コンテンツの生まれかたと受けとりかた」


「地球の科学」ほか担当の新正です。。6月4日(木)に学習センター講座スペースにて、今年度初回の「TKUサイエンスカフェ」が開催され、約30名をの学生・教職員が聴講しました。サイエンスカフェは、学外の若手研究者をお招きして、ケーキやコーヒーを楽しみながら最先端の科学の話題に触れ自由に議論できる場です。本学では2011年度から毎年複数回開催されています。


今回は、明治大学の山中祥太さんに「コンテンツの生まれかたと受けとりかた」というタイトルでお話しいただきました。



最初にYouTubeに1日どれくらいの長さの動画がアップロードされるか?という、つかみの質問から始まり(答え:1日で49年分)、ニコニコ動画のコメントから何がわかるか、視線計測器を用いて動画に注視点を加える試みなど、実例を交えながら次々に紹介されました。

コンテンツの受け止め方の話の中では、画像加工技術が普及してから心霊写真を扱う本やテレビが減ったことなどをPhotoshopでの実演をふくめて説明されたのが印象に残りました。

さらに発表した「その後」のムーブメントとして2次創作、3次創作の支援について述べられ、動画だけでなく、書道!の例も見せていただきました。

最後に所属研究室の取り組みの紹介をされ、プレゼンテーションの支援、音楽演奏の支援、ラッピング支援、不可能立体の3Dモデルなど、数多くの例をあげて解説されました。コンテンツを作る、公開する、公開後の支援と総合的にとらえて多様な研究が行われている様子が伝わってきました。

日頃ネット動画に親しんでいる学生からは、自分の経験にも紐付いた具体的な質問が沢山出て講演後も盛り上がりました。帰り行く学生からも「面白かったな」の会話が聞こえてきました。

カフェなのでコーヒーとケーキが振舞われます。
TKUサイエンスでは、サイエンスカフェに加えて、学外の研究施設等を見学するサイエンスツアーも催行します。次回サイエンスツアーは、7/2(木曜)の14:40〜17:00で小金井にある、情報通信研究機構(NICT)を見に行きます。大学で集合してのんびり歩いて行けます。ぜひご参加下さい。申し込みは学習センターまで(参加対象は本学学生です)。
※NICTには日本の「時間」を守っている部署もあります。JR武蔵小金井駅の時計を注意してみてください。

【参考】