2014年8月30日土曜日

八ヶ岳山麓でゼミ合宿 -教員の夏休み編4-

自然の構造と科学論の担当の榎です。今回は、総合教育演習の天文ゼミ(榎ゼミ)の夏合宿の報告をします。今年は、八ヶ岳山麓の甲斐大泉にて、826日~28日と23日で合宿を行いました。

サントリー白州蒸溜所にて
1日目の朝、立川駅に集合し、中央本線の特急に乗り、小淵沢駅で下車します。まずは、サントリー白州蒸溜所に向かい、ウイスキー工場見学ツアーに参加します。発酵槽、蒸溜釜、熟成庫などを見学し、最後にウイスキーの試飲をします。このような工場見学で試飲できるウイスキーは大変おいしいものです。なお、20歳未満の参加者には、ソフトドリンクが提供されます。



その後、小海線の列車に乗って、宿泊先である甲斐大泉の八ヶ岳ロイヤルホテルに向かいます。ここは、本学の学生厚生施設で、安く宿泊することができる上に、屋上の展望デッキには天体観測ドームがあるので、天文ゼミの合宿にはもってこいです。夕食後、屋上で天体観測を行おうとしますが、残念ながら、天気は曇り。それでも、ねばって空を見上げ続けていると、時々、雲の切れ間から、素晴らしい星空がのぞきます。流れ星も見ることができました。天体観測ドームの望遠鏡で、二重星アルビレオを観察させてもらえました。


学生さんが撮影した星空
薄い雲も見えますが、多くの星々と流れ星が写っています。
2日目の昼は、二つのグループに分かれて行動しました。私は、サンメドウズ清里へ行くグループについていきました。ここはスキー場ですが、夏でも楽しめる場所です。リフトに乗り、標高1900mの山頂に向かいます。気温は13度。晴れていれば富士山も見える絶景なのですが、残念ながら、深い霧のため、何も見えません。それでも色々楽しむことはできました。夜は、天体観測を行おうとしますが、雨になってしまい、全く星は見えません。一部の学生さんたちは、全く星が見えないのは悔しい、ということで、プラネタリウムを自作しました。手持ちのものを活用して作ったものにしては、なかなか良い出来で、十分楽しむことができました。
標高1900mのサンメドウズ清里山頂にて
3日目は、小海線で小淵沢駅に出て、ハプニングもありましたが、八ヶ岳アウトレットに寄ってから、中央本線の特急で立川駅に帰ってきて解散、となりました。

今回の合宿は、残念ながら、天候に恵まれず、ほとんど天体観測はできませんでした。雲の切れ間から見えた星空でも素晴らしかっただけに、晴れていれば、と考えると悔しい限りです。自然を相手にしていると、人間の考えた通りに物事は進みません(人間相手でも、なかなか進みませんが)。そういったことを実感することも、天文ゼミの学習の一環だと考えています。

2014年8月23日土曜日

城ヶ島でゼミ合宿―教員の夏休み編3―

「地球の科学」等担当の新正です。

夏期休業期間中の様々な活動についてレポートするという企画の3回めとして(1回め2回め)、ゼミ合宿について記したいと思います。

学部専門のゼミに加えて、我々一般教養系の教員も「総合教育演習」という科目名で、それぞれのゼミを開いています。ゼミでは平素の授業に加えて、見学その他で学外に出かける機会を持つことがあります。

とりわけ夏休み期間には、合宿を開くゼミが多くみられます。今回、私どものゼミでは1泊2日で城ヶ島に出かけて、地層や地形を観察してきました。

お昼に京急三崎口駅に集合。バスで城ヶ島に移動します。宿に荷物を置いて、地層観察に出かけましょう。夏の炎天下で暑さが心配でしたが、若干雲が出て、かつ海からの風が涼しく、約3時間海岸沿いを歩きながら、観察を行いました。城ヶ島海岸には、やや古い時代(1000万年前〜数百万年前ごろ)に比較的深い海にたまった地層が広く露出し、様々な堆積構造がみられるために、観察の適地として有名です(参考:日本地質学会地学教育委員会「城ヶ島たんけんマップ—深海から生まれた城ヶ島—」)。下の写真で観察できたいくつかの顕著な構造を示します。
火炎状構造。上側の地層が加重で沈み込んで、
下側の軽い凝灰岩層が吹き上がったように見える。
スランプ褶曲。たまった後、地層がある程度固まったところで、海底地滑りなどでぐにゃりと曲がった。


島の西、南海岸をずーっと歩いて、洞門で集合写真を撮り(昨年のサイエンスツアーでもこのあたりに降り立ちました)、バス道に戻ったところで、ちょうどバスが。やれやれ助かったと、終点まで乗って宿に帰着しました。




夜の食事タイム。さすがに三崎だけあって、サザエのつぼ焼き、マグロのかま焼きのほか、大きな台に載った大量のお刺身が供されました。なかなか減らないで残ったら申し訳ないなあと思いましたが、さすがにそこは若者、結局沢山の料理もなんのその平らげました。




翌朝は早くから学生有志が釣りに行ったようですが朝寝坊な私はパス。あまり大したものは釣れなかった、という話でしたが、釣ってきた魚は捌かれて朝食時それぞれに一口サイズの天ぷらとして供されました(マジで美味しかったですよ)。

翌朝は快晴
2日めはバスで移動して、「諸磯の隆起海岸」露頭へ。ここは現在標高30 m弱ありますが、かつて波打ち際であった証拠がみられるもので、崖を観察したり、高さの計測などを行いました。さらにバスで移動して油壷の験潮場を見に行って、解散。2日めは徒歩とバスで移動でしたが、かんかん照りで暑かった。お疲れさまでした。

というわけで、短い期間でしたが、合宿は終わり。2期はゼミ発表会に向けてしっかり励んでいただきたいものです。

宿泊先の城ヶ島さんご荘の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。


関連リンク

2014年8月20日水曜日

議院石のふるさとを尋ねて―教員の夏休み編2―

「地球の科学」等担当の新正です。

夏期休業期間に入り、教員各位においては研究活動に精出す(べき)時期ということで、いそいそと出張に出かけたりします。そこで先日野外調査に行った先で、見学してきたことなどをつれづれに記してみたいと思います。(教員の夏休み編第一回はこちら。)

春の調査レポートでも少し触れましたが、西日本には日本海ができた直後のマグマ活動でできた火山体が広く分布しています。瀬戸内海の島々にも、規模は小さいものの当時のマグマ活動の産物が見られ、今回防予〜芸予諸島の島々のいくつかを巡って調査をしてきました。

しかし、瀬戸内海の島々の地質といえば、花崗岩(いわゆる御影石ですね)を多産し、古くから石材として利用されていたことがよく知られています。たとえば香川県の小豆島では「大坂城石垣石切丁場跡」が国指定の史跡になっています。

今回廻った島の中の一つ、広島県倉橋島には「議院石」のふるさとがあります。そこを訪ねたときの模様を報告させて頂きます。



なぜ「議院石」か?

丁場の様子
実は国会議事堂の外装部分の多くを、この倉橋島産の御影石が占めているからです。国会議事堂の石材については、内装、外装とも国産品を使用するという方針で集められ、全国の様々な産地の岩石が使われています。議事堂の外装の1階は徳山市の南に浮かぶ黒髪島の「黒髪石」が、2階以上は倉橋島産の石材が使われています(工藤ほか, 1999)。


ブロック状に石を浮かせて切り出す

採石場を見せていただきました。「議院石」については現在、注文に応じて採石、加工をされているそうです。小規模な発破を用いて、ブロック状の石材を切り出します。加工場では、議院石のみならず、大島石や外材なども加工されているそうです。




サンプルもいただきました。
当地の御影石は、カリ長石という鉱物が淡紅色を帯びた美しいものです。それも、切り出してしばらく時間を置くと、紅色がやや増すということです。国会議事堂への石材の供給は大正12年からおこなわれ、当代の曾祖父の代のことであったと伺いました。

岩石のサンプルをいただいたので、いろいろ分析してみたいと思います。



呉石材株式会社の中川さんには快く見学を受け入れていただくとともに、様々ご教示をいただきました。厚く御礼申し上げます。

参考
工藤晃ほか (1999) 『新版 議事堂の石』新日本出版社


関連リンク

2014年8月17日日曜日

他大学のゼミに参加 ―教員の夏休み編1―

倫理学とフランス語担当の相澤です。

授業がない夏休みに教員は何をしているのか? 疑問に思う方もいるかもしれません。我々教員は、時間の余裕のある夏休みに、調査に出かけたりじっくり論文に取り組むなどして研究を進めたり、研究成果を発表したりしています。合宿をして、普段とは違うゼミ活動を行う教員も多いですね。今回は「教員の夏休み編」として、センター所属教員の何名かで夏休みの活動を紹介します。第一弾は私。他大学のゼミに呼ばれて講演したことを報告したいと思います。

去る8月3日、福岡大学の宮野真生子ゼミと九州産業大学の藤田尚志ゼミの合同ワークショップにゲスト講師として呼ばれて、最近の研究をお話してきました。宮野ゼミと藤田ゼミは二年前から、数ヶ月に一度合同ゼミを開催し、相互に学びを深めているとのこと。今回は17回目(!)の合同ゼミ。雨の日曜日だというのに、朝から多くのゼミ生が集まっていて嬉しい驚きでした。

対話する(?)人々。

今回のゼミのテーマは「自由な主体?―"性的身体"としてのわたしたち―」。私が「私のことは私が決める!決められる?―ピルを例に考える―」というタイトルでお話しし、もうお一方、九州大学の古賀徹先生が「性的自己決定というときの「自己」とは何か」というタイトルで発表されました。二つの発表の後にゼミ生との質疑応答、ディスカッションを行いました。


午後には宮野・藤田ゼミ生のみならず、同大学の他のゼミ生や卒業生、さらには案内を見て来てくださった学外の方まで、総勢40名ほどが聞きに来て、活発に質問や意見を出してくださいました。いろんな意見を聞いて、私も勉強になりました。

最後にみんなで記念写真。
普段の私のゼミでは、6名のゼミ生とこじんまりと文献を読んだり、発表の練習をしたりしています。今回、外部のゼミに参加して、学生との勉強の仕方や指導の仕方を改めて考える機会となりました。何よりも、いろんな学生さんとお話できたのがとても楽しかった。呼んでくださった宮野先生、藤田先生、そして合同ゼミに参加してくださったみなさまに感謝です。また機会があれば、福岡に行きたい!と思っています。


というわけで、教員の夏休み編第一回はここまで。次はどなたの夏休み報告でしょうか...?お楽しみに。