2021年5月19日水曜日

多言語化する地域社会の理解に資する言語学

 আস্সালামু আলাইকুম(アッサラーム アライクム) 大家好!(ダージャーハオ)! 大家好!(ダーゲーホー) Сайн байна уу(サインバインノー?)

 (クイズ:これらは何語でしょう?答えはこの記事の中に隠れています。)

 英語・言語学を担当する小田登志子です。今学期の「言語学a」では国分寺地域にお住まいの8名の外国籍の方々を授業にお招きして、言語紹介のトークを行います。「言語学」は遠隔授業のため、ゲストトークはZoomを用いて行っています。これまでのトークの様子をご紹介しましょう。 


Zoomに登場したシェリンさん。 奈良・京都旅行で初めて鹿に触りました。

 バングラデシュ・ダッカ出身のシェリンさんは西国分寺にお住まいです。2020年に来日しました。バングラデシュで話されている主な言語はベンガル語です。バングラデシュ人のほとんどがイスラム教徒であるため、一般的なあいさつは「アッサラーム アライクム」です。ベンガル文字で書くとআস্সালামু আলাইকুমになります。ベンガル語は日本語と同じSOV言語です。シェリンさんはベンガル語の他に英語も流暢に話します。バングラデシュの大学では授業はほとんど英語で行われるそうです。

 トークの最後にQ&Aの時間を設けたところ、たくさんの学生が「チャット」を使ってシェリンさんに質問しました。普段の教室では手を挙げて質問する学生はなかなかいないので、びっくりしました。シェリンさんが英語でトークを行ったため、英語で質問した学生もいました。「日本とバングラデシュの社会で似ているところはありますか?」という質問に対して、シェリンさんは「さまざまな宗教に対して寛容である点です」と答えました。   


Zoomに登場した陳昆典さん。台湾の大学で弓道部を設立しました。

  台湾・台南出身の陳昆典(チェン クンディエン)さんは、一橋大学大学院を卒業して現在は日系企業で働いています。日本語がとても流暢なため、履修者の中には「日本人かと思った」とコメントした人もいました。台湾では台湾華語(台湾の国語としての中国語)の他に、台湾語(台湾閩南語)も台湾南部を中心に話されています。「みなさんこんにちは」は台湾華語では大家好!(ダージャーハオ)ですが台湾語では大家好!(ダーゲーホー)です。陳さんの祖父母は台湾華語を話さないため、陳さんの家では家族は台湾語を話しています。履修者は国語が必ずしも国民全員に通じるとは限らないことに驚いた様子でした。

 日本が台湾を統治していた時代があるため、台湾語には日本語の語彙が入っています。「ウンチャン」は台湾語で何を意味するかクイズを出したところ、見事「運転手」と当てた人がいました。


Zoomに登場したバダラハゲレルさん。Twitchのチャンネルに世界中からアクセスがあります。

 モンゴル・ウランバートル出身のバダラハゲレルさんは府中市にお住まいです。高校を卒業した後一人で来日し、日本語学校を卒業したのち、現在は専門学校でIT技術を学んでいます。モンゴル語の音はとても複雑で、講師の小田は「元気ですか?」を意味するСайн байна уу(サインバインノー?)以外は真似することさえできませんでした。モンゴルでは名字を使う習慣がありませんが、日本では名字を記入するように言われるので、お父さんの名前である「バーサンフー」を名字の欄に書くそうです。すると「バーサンフーさん」と呼ばれるので違和感がある、とおっしゃっていました。ある履修者は「モンゴルの人と友達になったら本人の名前を呼んであげようと思う」とコメントしました。

 バダラハゲレルさんは、Twitch(ツイッチ)でゲームのストリーミング配信をしています。そして自分のチャンネルに来てくれた人とモンゴル語・日本語・英語でおしゃべりしています。Zoom画面でアナリティクスを見せてもらったところ、バダラハゲレルさんのチャンネルには世界中からアクセスがあることがわかり、履修者は驚いていました。「英語ができたらゲームの世界でたくさんの人と交流できると思う」と述べた人もいました。

 日本の人口は多様化しつつあります。国分寺地域においても、いろいろな言語を耳にするようになりました。国分寺市の外国籍人口は約2600人で、市の人口の約2%に相当します(202151日現在)。ゲストによる言語紹介を通じて、私たちの地域社会に住む多様な言語を話す人々に対する理解を少しでも深めていきたいと考えています。

・この取り組みは東京経済大学教育改革支援制度(進一層トライアル)の助成を受けて行われています。

・ゲストの招聘に際して、国分寺市国際協会のご協力を得ました。この場を借りてお礼申し上げます。(参考:国分寺市国際協会ホームページ

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