2016年1月25日月曜日

【学問のミカタ】一年は何秒?

 「自然の構造」他担当で、天文学が専門の榎です。さて、【学問のミカタ】の今月のお題「正月」ですが、これは、暦の年初のことを指します。日本では、明治時代よりグレゴリオ暦が使用されていますので、現在の日本での正月はグレゴリオ暦の年初になります。
 
 さて、この正月から2016年が始まりましたが、2016年の1年は何秒でしょうか?1日は24×60×60秒=86400秒で、今年は「うるう年」なので1年は366日ですから、366×86400秒=31622400秒となります。では、昨年、2015年の1年は何秒でしょうか?昨年はうるう年ではないので1年は365日ですから、365×86400秒=31536000秒だ、と思うかもしれませんが、実は、31536001秒と、1秒だけ余計に長かったのでした。これは、2015年は、「うるう秒」が挿入されたからです。

 「うるう秒」とは何でしょうか?これは、1秒の決め方からくるものです。もともと、1秒は、地球の自転や公転などといった、地球の運行を基準として決められていました。しかし、地球の自転の速さが一定ではなく不規則に変化していることが明らかになってきたため、基準として不適当であり、もっと高精度の基準が必要であると考えられるようになりました。そこで、現在では、セシウム133原子が放射する特定の電磁波の周期を1秒の基準としています。とはいえ、日常生活における時刻は、朝に日が昇り、夕方に日が沈むなどといった、地球の運行から生じる自然現象に深くかかわっています。そこで、地球の運行を基準に決められた時刻を、原子が放射する電磁波を基準にして決められた時刻とうまく合わせるために、時々、「うるう秒」を挿入したり、削除したりして、調整したものを標準時として使用するようになりました。

NICTの日本標準時発生システム
 2015年の場合、日本では7月1日にうるう秒が1秒間挿入されました。日本標準時の午前8時59分59秒の1秒後に、「午前8時59分60秒」という時刻が挿入され、その1秒後が午前9時00分00秒となりました。この日本標準時を生成して供給し、各国の標準時と比較しているのが「情報通信研究機構(NICT)」です。NICTの本部にはセシウムを使った原子時計が設置され、日本標準時を生成し、供給するシステムがあります。電波時計へ送られる時刻合わせの信号の大元もここで生成されています。

 NICTの本部は、東経大の国分寺キャンパスから北の方へ、歩いて20分くらいのところにあります。昨年、うるう秒が挿入された翌日の7月2日に、TKUサイエンスツアーでNICTを見学に行きました。この時は、日本標準時を生成している部屋を見るという貴重な体験をすることができました。NICT本部展示室なら、申込をしなくても自由に見学できます。なかなか面白いNICTの研究成果が多く展示されていますので、大学の行き帰りに、こちらにも足を伸ばしてみてはどうでしょうか?

【参考リンク】
 ・NICT日本標準時グループ

 ・NICT本部展示室
 ・TKUサイエンスツアー第1弾「情報通信研究機構NICTに行ってみよう!!」