2015年7月16日木曜日

【学問のミカタ】 産んでちょうだいサンゴさん


 皆さん、こんにちは。生物学の大久保奈弥です。私は海の生物であるサンゴの産卵と発生の研究をしています。発生とは、精子と卵が受精した後、卵が分裂して色々な組織をつくる過程のことです。日本のサンゴは毎年5−8月に産卵し、その時期は色々な場所で実験します。だから、とても忙しいです。先週までは、沖縄県の瀬底島にある琉球大学瀬底実験所で、ダイオウサンゴとリュウモンサンゴという2種類のサンゴの観察をしていました。

 観察は、おそらくこのあたりに産卵するだろうという情報をもとに行います。そのため、産卵予定日の前後1週間、サンゴにずっとはりついて、夕方から夜中まで1時間おきに観察します。といっても、授業をずっと休むことは出来ないので、6月は、串本海中公園水族館で元館長をしていらした御前洋さん(サンゴ飼育の超プロで、世界で初めてサンゴの養殖に成功した方)に、科研費で沖縄へ行ってもらいました。そう、科研費とは、研究するために国からもらうお金です。税金なのです。だから、頑張らなくてはいけません。そして、この大きなお金がないと私の研究は出来ません。研究が出来ないと論文が書けません。Publish, or perish. 研究者の世界には、こんな恐ろしい言葉もあるくらいです。。。

 さて、話がずれましたが、写真が私の観察したサンゴさん達です。ボコボコしている方がダイオウサンゴで、波模様はリュウモンサンゴです。素晴らしいネーミングセンス。では、6月・7月と沖縄まで行って、ねばって、産卵観察できたのでしょうか?


ダイオウサンゴ
リュウモンサンゴ

 
 答え:残念ながら産卵しませんでした〜。

 自然というのはそういうものです。人間の都合通りには行きません。難しいですね。8月リベンジ決定です。

 私は、この難しいサンゴの発生観察を学生時代からもう15年くらい続けています。世界で一番、色々なサンゴの発生を見ているという自負があります。まあ、単に面倒なので誰もやりたくないのでしょう。おかげで最近、イシサンゴ目最大の謎の1つとされてきた、分類学上の問題を解くことが出来たようです(←私の分野のことじゃなかったので、いまいち実感がありません)。サンゴの研究を続けてきて、生物学という学問に、ようやく1つ貢献できたかなと思います。

 教員にとって、研究はとても大切です。例えば、理科教育の内容は、昔からの研究成果です。また、研究をしていると、生きた教育が出来ます。だから、なるべく色々な研究をして、皆さんに生き物の素晴らしさを伝えていきたいです。

 最後におまけで、サンゴを入れた水槽から見つかった、おそらく初めて発見されたであろう、オオイカリ(?)ナマコの赤ちゃんです!もちろん御前さんの発見です。さすが、プロですね〜!
 
 
オオイカリ(?)ナマコの赤ちゃん