2014年8月20日水曜日

議院石のふるさとを尋ねて―教員の夏休み編2―

「地球の科学」等担当の新正です。

夏期休業期間に入り、教員各位においては研究活動に精出す(べき)時期ということで、いそいそと出張に出かけたりします。そこで先日野外調査に行った先で、見学してきたことなどをつれづれに記してみたいと思います。(教員の夏休み編第一回はこちら。)

春の調査レポートでも少し触れましたが、西日本には日本海ができた直後のマグマ活動でできた火山体が広く分布しています。瀬戸内海の島々にも、規模は小さいものの当時のマグマ活動の産物が見られ、今回防予〜芸予諸島の島々のいくつかを巡って調査をしてきました。

しかし、瀬戸内海の島々の地質といえば、花崗岩(いわゆる御影石ですね)を多産し、古くから石材として利用されていたことがよく知られています。たとえば香川県の小豆島では「大坂城石垣石切丁場跡」が国指定の史跡になっています。

今回廻った島の中の一つ、広島県倉橋島には「議院石」のふるさとがあります。そこを訪ねたときの模様を報告させて頂きます。



なぜ「議院石」か?

丁場の様子
実は国会議事堂の外装部分の多くを、この倉橋島産の御影石が占めているからです。国会議事堂の石材については、内装、外装とも国産品を使用するという方針で集められ、全国の様々な産地の岩石が使われています。議事堂の外装の1階は徳山市の南に浮かぶ黒髪島の「黒髪石」が、2階以上は倉橋島産の石材が使われています(工藤ほか, 1999)。


ブロック状に石を浮かせて切り出す

採石場を見せていただきました。「議院石」については現在、注文に応じて採石、加工をされているそうです。小規模な発破を用いて、ブロック状の石材を切り出します。加工場では、議院石のみならず、大島石や外材なども加工されているそうです。




サンプルもいただきました。
当地の御影石は、カリ長石という鉱物が淡紅色を帯びた美しいものです。それも、切り出してしばらく時間を置くと、紅色がやや増すということです。国会議事堂への石材の供給は大正12年からおこなわれ、当代の曾祖父の代のことであったと伺いました。

岩石のサンプルをいただいたので、いろいろ分析してみたいと思います。



呉石材株式会社の中川さんには快く見学を受け入れていただくとともに、様々ご教示をいただきました。厚く御礼申し上げます。

参考
工藤晃ほか (1999) 『新版 議事堂の石』新日本出版社


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