天文データアーカイブとは、ある観測時刻における天域の唯一の記録である天文観測データを保管し公開するものです。なぜ、保管し、公開するのでしょうか?その理由は、観測データは非常に多くの情報を持っているので、観測者の目的とは別の視点に立った新たな研究に有効活用できるからです。研究者が天体観測を行いたい時、まず、各国の研究機関が持つ天文台に、観測の目的・方法を説明した提案書を提出します。提案された観測の科学的意義や実現可能性などが審査され、それが認められれば、その天文台の望遠鏡を使って観測できます。観測者が取得したデータは、当初は観測者が占有して研究に使えますが、一定期間(1~2年)が過ぎると、公開されます。公開される理由の一つは、他の研究者による研究成果の検証を可能にするためです。もう一つは、上述した、観測者の目的とは別の目的の新たな研究に有効活用するためです。例えば、観測で得られた画像には、目的天体とは別の天体も映っていることがあるので、その画像は別の天体の研究にも利用できます。また、ある条件で選択した観測データをサンプルとして多く集めることで、統計的な研究に使うこともできます。特に、大型望遠鏡は、数も少なく、使える時間にも限りがあるので、他人が観測したデータも活用した方が効率的に研究をすすめることができます。
SMOKAのデータ検索画面 |
さて、通常、天文データアーカイブで提供されているのは、天体の観測「データ」であって、天体のきれいな「絵」ではありません。データの形式もFITSという天文データ専用の特殊なもので、一般の画像で使われるJPEGなどの形式とは異なります。しかし、SMOKAには「全天モニタ画像公開システム」というシステムがあり、JPEGの全天画像を提供しています。これは、SMOKAに保管されている画像のうち、デジタル一眼レフカメラを用いた岡山天体物理観測所、東広島天文台、東京工業大学MITSuME望遠鏡(明野)の全天モニタ画像を対象とした、画像検索および請求システムです。各観測所に設置されている全天モニタは、本来は、観測中に天候状況などをチェックするために、全天を1~2分間隔で撮影した画像をリアルタイムで提供するものです。この全天モニタの画像は、望遠鏡で取得されたものではありませんが、一般に使いやすい画像形式であるので、研究者以外の人も様々な目的に有効活用できます。全天を撮影しているため、天の川全体も一枚の画像で見ることもできます。撮影した時刻の順番で並べると、天体の見かけの動きが分かり、動画にすることもできます。実際に学校の授業などで天体を数か月~数年単位で長期間観測し続けることはなかなかできませんが、このシステムを使えば、そのような長期間の天体の動きも見ることができます。
今年度の私のゼミ(総合教育演習の「天文ゼミ」)の学生さんたちは、後期に、このSMOKAの全天モニタ画像公開システムから取得した画像を活用して、様々な天体の動きを調べています。システムに保管されている膨大な画像の中から目的の天体が写っている画像を見つけるためには、どのような条件で検索をすればよいかを考え、工夫する必要があります。これは、なかなか大変ですが、勉強になります。この成果は、12月8日(土)午後に開催されるゼミ報告会で発表される予定です。
11月の【学問のミカタ】
・経済学部「『科学的に証明された』健康に良い食品」
・経営学部「あなたは予防にお金をかけますか? 」
・コミュニケーション学部「カニバリズムについて」
・現代法学部「ギリシャ・ローマ古典文学における戦争と平和 」
・キャリアデザインプログラム「」