2017年7月11日火曜日

TKUサイエンスカフェ「映像世界と身体感覚」開催

数学担当の阿部です.7月3日(月曜日)にTKUサイエンスカフェが学習センター講座スペースで開催されました.今回のテーマは「映像世界と身体感覚」.講師は明治大学大学院先端数理科学研究科の齊藤寛人さんです.当日は学生21名,教員2名が参加し,茶菓を楽しみながら映像サイエンスの最先端を体験しました.

みなさんは3Dテレビを覚えていますか.ロンドンオリンピックの頃店頭にたくさん並んでいたあれです.最近見かけなくなってしまいましたが,3D効果は抜群でした.テレビから飛び出してくる海賊のサーベルを反射的によけたなんて経験があるひとも多いんじゃないでしょうか.なんでサーベルが飛び出してくるんでしょう.これは両眼視野闘争という身体感覚を利用して,飛び出したように錯覚させるんだそうです.両眼視野闘争とは、「2つの目でそれぞれ異なる視覚図形を見た場合、どちらか一方の図形が知覚され、時間が過ぎるとともに知覚が切り替わる現象」(脳科学辞典)を言います.片目だけつぶっても見えている景色は半分暗くなりませんよね.これは開いている目で知覚している景色と閉じている目で知覚している暗闇との間で両眼視野闘争が起こり,景色が暗闇に勝っているからです.こんな素朴な身体感覚をつきつめるとテレビから出てきた海賊のサーベルごときにビクってなってしまうんですね.ちなみに下記の映像は,3D効果を入れた映像ですが,片目で見ると両眼視野闘争によって少し3D効果が増すそうです.試してみてください.

「ルパン三世」オープニング映像(YouTube


他にバーチャルリアリティから得られる身体感覚についても紹介してもらいました.これも素朴なところから出発します.心理学の古い実験で「ラバーハンド実験」というのがあります.自分の手とラバーハンドを並べて,自分の手は視界からはずしラバーハンドだけを見ます.その状態で自分の手とラバーハンドを同時にくすぐり続けると,そのうちラバーハンドをくすぐっただけで,こちょばゆく感じてしまうという実験です.

【心理学】ラバーハンド実験(YouTube


このラバーハンドをバーチャルリアリティに置き換えることで,エンターテイメントはもちろんリハビリなど医療分野でもバーチャルリアリティが活用されていることを知りました.

映像サイエンスの最先端をたくさん紹介してもらいましたが,いまのところ活用されている分野はエンターテイメントあるいは医療分野とのことでした.数年後これらの技術はいずれも身近なものになります.研究者の方々は技術の発展に日々努めています.利用する側のみなさんにはこういった最先端の技術が何に応用できるのか日頃から考えてほしいと思います.最先端の技術を利用して社会をよりよくすること.これは将来みなさんが中心になってやっていくべき仕事です!

・昨年度のTKUサイエンスカフェの報告
第1回「ブラックホール、ビッグバン、そして次元 ~人に話したくなる宇宙のおはなし~
第2回「コスモスを秋桜と書く理由、秋桜が春に咲く理由