2017年5月25日木曜日

【学問のミカタ】噴火する火山を目の当たりにして

「地球の科学」ほか担当の新正です。

プコンから見たビジャリカ火山
今年度の「学問のミカタ」では、それぞれの研究分野で行っていることの紹介もおこなうということで、「地球科学」に関連して、野外調査での経験を記してみたいと思います。

この2月に南米チリの火山調査に行ってきました。当地の火山を10年以上にわたり研究しているグループの末席でサンプルの若干の化学分析を請け負っている立場で時に現地の調査にも参加させていただいています。

登山ツアーの宣伝
今回自分にとって目玉であったのは、常時活発に活動している火山の一つビジャリカ山(2860 m)に登って噴火の有様を目の当たりにすることができたことです。この山はここ数十年山頂のクレーターに溶岩湖をたたえ、日常は小規模な噴火を繰り返しています(時に大きめの噴火をおこしてクレーターから溶岩があふれ出ることもあります)。

そのような状況でありながら、活動が盛んな時期を除いて専業のガイドの案内のもとに誰でも山頂を訪れることができ(ただしかなり長い登山で山頂近くの氷河も越える必要がありそこそこの健脚が求められます)、麓のプコンの街(チリでも有数の観光地です)にはいくつもの登山ガイド会社が軒を連ねます。そこでは火山ガスや噴火の状況を見て、その日その日の登山の可否を判断しています。

山岳氷河を越えます
チリ・アルゼンチン国境のラニン火山
などが遠望されます

山頂で間欠的に起こる噴火の様子をしばらく眺めていて、少し怖い感じがしたのも事実です。経験のある人が状況を見て判断して登山を行なっているので、一般的に危険な事はないでしょう。実際、一緒に登ったビジャリカ山を長年監視している現地のアマチュア火山学者の方は、何十年も安全におこなわれているよ、と胸を張っていました。

しかし、同様に大変活動的な火山でありながら観光登山が行われているイタリアのエトナ山で、この3月にBBCのスタッフを含む登山客が噴石に巻き込まれるという事態が発生しています(動画含む報道)。

ビジャリカ山でもクレーター内で数分に一度程度起こる小規模な噴火を、クレーターの縁で多くの人々が眺めているわけですが、次の一発が気まぐれに少し大きめになり、人がいるところまで噴石が飛んでくる、という可能性は否定はできません。ただ、頂上で観察される光景は本当に素晴らしく、世界各地からこれを目当てに苦労して登ってくる人がいるのも頷けます。

大勢の人が山頂クレーターを覗き込む


溶岩湖がチラ見えしている
今後は、各地で採取したサンプルを分析して、マグマ生成への水の効果などを調べてゆきます。


今回の調査のビジャリカ山を含む一部行程には撮影クルーが同行していて、そこでの撮影を含めてチリ火山地帯を紹介する番組が先日BSプレミアムで放映されました。再放送もあると思いますので、ご覧いただけると幸いです。


NHK BSプレミアム 「体感!グレートネイチャー」
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