2016年5月18日水曜日

【学問のミカタ】金でも取れるかね?

お金といえば、紙幣と硬貨がありますが、硬貨とは切っても切り離せない金(きん)のはなしでもしてみましょう。

Bray's Golden Quarry坑口
金はその化学的な侵されにくさから錆ずに美しさが永続すること、またその希少性などから、古くよりその価値が認められてきました。また、現代では高い電気電導度などから工業製品にも広くもちいられ、金属としての価値が減ずることがありません。

本稿を執筆しております新正は地球科学分野を専攻のため必然的に野外調査を行います。そして調査中には通りすがりの人からしばしば声をかけられます(不審に思って?あるいは興味を持って?)。石を調べている旨の返事をした時の定番の反応として「金でも取れるかね?」というものがあります。すなわち世の人々にとって、大地から掘り出されるものとしてまず思い浮かぶものが「金」ということかもしれません。

さて、このように希少価値の高い金は、有史以来どれくらいの量が採掘されてきたと思いますか?
① 一坪規格のユニットバス15杯分
② オリンピック公式プール3.5杯分
③ 霞が関ビル0.8杯分
④ 東京ドーム1.6杯分
※なお東京ドームの体積は霞が関ビルのそれの1.5倍あまりのようです。
(解答は下部にあります)

金が見つかった場所では、いわゆるゴールドラッシュがしばしば起こります。先年学会で南アフリカを訪れた際に、まさに夢の跡を見る機会がありました。 スワジランドにほど近いバーバトン地域にあるBray's Golden Quarryを見学しました。木のはしごを登って坑口にたどり着き、狭い坑道をしばらく行くと大広間に出ます。1885年に品位の高い金鉱床が発見されるとあっという間に基本的に手堀りで地下の大空間が作られたとのことです。
坑道は狭い
中は大広間。明かりは奥で
天井が抜けているため
現在稼働中の鉱山は高セキュリティー
※ゴールドラッシュの模様を示すスライドショー (YouTube


なお南アフリカは現状も世界6位(2012年)の産金国であり、近くでは今も近代的な金採掘が行われています(Sheba Gold Mine)。



また、国内にも昔の金山跡が観光地化されている場所がいくつもあります。ぜひ訪れてみてください。
史跡 佐渡金山
土肥金山(西伊豆)
今も採掘されている菱刈鉱山(鹿児島県)

 「地球の科学」ほか担当の新正が記しました。

上の問いの解答:②
有史以来の金の採掘量は、約166,600トンと推定されており、体積に換算するとオリンピック公式プール約3.5杯分になるとのことです。
典拠:田中貴金属工業株式会社|金の価値

 【学問のミカタ】 5月のテーマ「お金」
・経済学部ブログ 「経済と言えばお金!!………なの?
・経営学部ブログ 「利益を増やすために考える2つの視点
・コミュニケーション学部ブログ 「働くモチベーション
・現代法学部ブログ 「お金について~ マイナス金利など
             「お金について~ その2 電子マネー、仮想通貨など

2016年5月1日日曜日

異国で地震の報を聞いて

国外研究員としてフランスに滞在中の相澤伸依です(フランス語と倫理学担当)。

ご存知のとおり、熊本で大地震が起きました。私は熊本生まれの熊本育ち。遠い国で故郷の災害を眺めることになりました。今回はその中で考えたことを綴りたいと思います。

414日、日本は21時すぎ、フランスは14時過ぎ。家で作業をしていたところ、日本の友人たちから熊本で大きな地震が起きたというメールが届きました。慌てて実家に連絡したところ、無事との知らせがあり安堵しましたが、時間が経つにつれて被害の様子が明らかになっていき、不安になります。

仏時間夜になるとフランスの新聞(Le Monde紙のインターネット公開版を閲覧)でも写真つきで報道されるようになりました。印象的だったのは、原発のリスクが記事で大きく取り上げられていたこと。ここでは、地震はまず原発事故と結びつけて考えられるのですね。

416日に本震が起こると、フランスでの報道もますます大きくなり、被災地の写真も報じられるようになりました。ここに至って、フランスをはじめヨーロッパの友人たちから心配するメールが届き始めます。「日本で地震があったみたいだけど家族は大丈夫か?」「熊本はノブヨの故郷だよね?」等々。

フランスで暮らして実感するのは、ヨーロッパにとっては、中東やアフリカの方が地理的に近く、政治的・文化的にも重要な位置を占めており、アジアのことまで関心を持つ人は少ないということ。普通のフランス人は、日本のことなんて全然興味ありません。たぶん、私の友人たちも私と友達でなければ、日本の地震なんてあまり気にしなかったと思います。でも、私の故郷だから気にかけてくれたのです。こんなふうに友人達が気遣ってくれるという事実が私を励ましてくれました。

地震から二週間あまりが経った今日、フランスの新聞に地震を報じる記事はもうありません。しかし、友達は気にかけてくれるし、私も熊本の様子を話し続けます。世界に友達を作るというのは、自分の世界への関心を広げることなんだと感じます。同時に、世界に自分の国を伝える、情報発信することなんだとも思います。本当に小さな活動ですが、この積み重ねが違う国の人同士を結びつけるんだろう、国際交流ってこういうことなんだろうと改めて考えたのでした。

さて、東経大にも熊本出身の学生が在籍しています。彼らをはじめとする学生、教職員の有志が、学内に熊本地震被災者への義援金募金箱を学内各所(学生課、学生相談室、図書館、入試課、広報課、校友センター、総務課、教員室)に設置しました。募金箱は学生の手作りです。キャンパスに掲示されたくまモンのポスターとあわせて、チェックしてみてくださいね。