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2020年1月11日土曜日

雅な古典遊戯~投扇興ワークショップ~

 日本文学(古典分野)担当の上野麻美です。 皆さん、令和になって初めてのお正月、いかがお過ごしでしたか? 私の子供のころ(昭和ですよ!)は、お正月の遊びといえば、かるた・すごろく・凧あげなど、江戸時代以来の古典的な遊びがまだ人気を誇っていました。令和の子供たちのお正月遊びはどうなのでしょう?家のリビングでAI相手にゲーム、なんていう日がすでに到来しているのかもしれませんね。

 さて、私の担当する「総合教育ワークショップ(くずし字いろは入門)」では、毎年、冬休み明けに「投扇興」のワークショップを実施しています。今年も、お正月気分がほんのりと残る1月9日、学内唯一の和室に緋毛氈を敷き、琴の音でも聞こえてきそうな気分の中で、優雅な古典遊戯を体験しました。


 投扇興とは、台(枕)に載った的(蝶)をめがけて扇を投げ、的と扇の落ち方で点数が決まる、優雅なゲームです。人々が熱中しすぎるというので、幕府がたびたび禁令を出したほど、江戸時代に大流行した遊びです。明治以降は花街や寄席での遊びとして伝わってきました。近年、この古典遊戯を復活させるべく、いくつかの流派が立ち上げられ、『源氏物語』や『百人一首』などの古典文学にちなんだルールや点数表が整備されました。

  「くずし字いろは入門」は基本的な変体仮名の読み書きを練習する授業ですが、その集大成として「変体仮名で書かれた投扇興の点数表(『源氏物語』形式)」が読めるように訓練します。そして、その訓練の成果を試す機会が「投扇興ワークショップ」です。ワークショップには、毎年、投扇興の流派の一つ「都御流(みやこおんりゅう)」の家元、小林粋扇先生をゲスト講師としてお招きし、競技のルールなどをご指導いただいています。今年は受講生32名に加え、関口和代先生とそのゼミ生のゲスト参加もあり、総勢35名で賑やかに開催しました。

 新年の晴れやかな良き日、『源氏物語』に思いを馳せながら、皆で過ごした楽しいひとときでございました。皆さんにとっても、よい一年でありますように。

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2017年6月22日木曜日

今年も500人が日本語検定を受検

 去る6月10日土曜日、本年度第一回の日本語検定の学内団体受検が実施され、約500名の学生が挑戦しました。

 日本語検定は、日本語の総合的な能力を測る検定試験で、多くの学校や企業が採用しています。本学では総合教育科目「文章表現基礎Ⅰ・Ⅱ」の授業の一環として、これを採用しています。日本語検定を2009年度から導入し、今年で9年目の実施となりますが、履修した学生の努力が実り、成績優秀校としてこれまで何度も検定委員会から表彰されてきました。今年2月には、昨年度Ⅱ期履修学生の3級受検成績が高く評価され、「文部科学大臣賞」をいただきました。

 本年度もⅠ期・Ⅱ期合わせて、のべ約1000人の学生が日本語検定を受検します。受検対策の授業を通して、大学での学びに欠かせない、文章表現力や会話コミュニケーション力の基礎を、多くの学生たちが学んでいきます。その力は大学生活だけにとどまらず、就職活動のさいや、またその先の社会人生活においても、大いに役立つ貴重な財産となります。
 
 履修学生の文部科学大臣賞受賞を励みとし、私たち担当教員もより一層、充実した指導を行いたい思います。
















(文責:上野麻美:日本語関連科目担当)

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2016年7月20日水曜日

体験授業―雅な古典遊戯「投扇興」を楽しむ

 日本文学の古典分野を担当しております、上野麻美です。私の担当する「総合教育ワークショップ(日本文学)」では「くずし字いろは入門」というタイトルで、変体仮名を読む授業を行っています。

 変体仮名(くずし字)は、一般にはもう使われなくなった古い仮名文字であり、古文書の研究者や書道を嗜む人といった、ごく限られた人々の間でだけ、読み書きがされています。しかし、老舗商店の看板、名所旧跡の歌碑や句碑など、現代の私たちが目にする変体仮名は意外と多いのですよね。こうした身近な変体仮名を読むことによって、日本の古典文学に親しみ、教養を深めようというのが、この授業の趣旨です。

 授業では、一通りの変体仮名が読めるようになった時点で、『源氏物語』の巻名を変体仮名で記した教材を使い、力だめしをします。実はこの教材は、投扇興の点数表になっていて、巻名が読めるようになったら、受講生に実際に投扇興を体験してもらうことになっています。

 さて、この「投扇興」を皆さんはご存知ですか?テレビで見た人もいるかもしれませんね。「さんまのまんま」という番組に、女優の宮沢りえさんが出演したさい、投扇興を紹介していました。

 投扇興は、小さな的に向かって扇を投げて当てる、という優雅な遊びです。江戸時代に大流行し、人々が熱狂するので幕府から禁止令が出るほどでした。その後、花街でのお茶屋遊びの一つとして、あるいは寄席の色物芸として、細々と残ってきました。しかし、近年、古典遊戯として流派の確立が進み、「粋な大人の遊び」として多くの人々が気軽に楽しめるように、普及活動が行われています。

 「くずし字いろは入門」では、去る7月15日に、「都御流(みやこおんりゅう)」という流派の家元でいらっしゃる小林粋扇先生と、そのお弟子さん方にお越しいただき、投扇興の歴史や遊び方についてご指導いただきました。

 掲載写真は、決勝戦に残った二人の学生の対戦の模様です。真ん中の和服姿の方が、家元小林粋扇先生です。ほとんどの学生が、投扇興で遊ぶのは初めての体験でしたが、家元とお弟子さん方の懇切丁寧なご指導により、初心者でも楽しく学ぶことができ、充実したワークショップとなりました。

 都御流の方々には来年1月にもご指導ただく予定です。受講者でなくても見学は可能です。興味のある方は、上野までお問合せ下さい。

2015年6月23日火曜日

【学問のミカタ】 もし梅雨という季節がなかったら…


「日本文学」担当の上野麻美です。

 じめじめと鬱陶しい梅雨の季節、からっと晴れた夏が待ち遠しく思われます。しかし、もし梅雨という季節がなかったら、日本文学はその独自性を失っていたのではないか、と私は思います。文字通りのウエットな国民性の本質的な部分がすっかり欠落するわけですから、当然、生まれる文学の傾向も大きく違っていたはずだと思うのです。
 
 しとしと降り続く長雨に降り籠められると、人は自ずと内省的になります。そんなとき、恋人や亡き人を思って詩歌を詠み、妄想に耽って物語を編む…。もし梅雨がなかったら生まれなかったのではなかろうか、と思われる作品は少なくありません。

 例えば『源氏物語』「帚木」の巻にある、俗に「雨夜の品定め」と呼ばれる場面を考えてみましょう。五月雨が降り続く梅雨の夜、主人公源氏を含む四人の男たちが、つれづれに恋愛談義を交わす有名な場面です。

 話はまず「女は上中下の三ランクに分けられるが、とりわけ中クラスに魅力的な女が隠れている」というコンセプトの提示で始まり、若い源氏に他の三人が過去の女性遍歴を語る、という趣向で展開します。まだ恋愛経験の少なかった源氏は三人の話に大いに刺激を受け、この場面は物語のその後の展開にも色濃い影を落とします。

  もし梅雨がなかったら「雨夜の品定め」は生まれなかった、と私は思います。降り続く雨で夜遊びにも出かけられず、暇をもてあました男たちが集う、という設定なくしてこの場面はなかったと断言します。もしこの日が晴れていれば彼らは恋人のもとを訪れるのに忙しく、野郎同士で恋バナする暇などなかったはずです。もちろん元カノを思い出すことなど微塵もなく、今カノのご機嫌とりに必死だったに違いありません。

  ……と、あらぬ妄想に耽っていると、研究室の窓の外も雨脚が強くなってきました。長雨のつれづれに思い出すのが元カレではない、という寂しい我が境遇が歎かれます。

 我が身世にふるながめせしまに…古歌がしみる梅雨の夕暮れです。