2014年11月28日金曜日

第9回読書会『人民は弱し 官吏は強し』

「地球の科学」ほか担当の新正です。

11月27日に私がファシリテーターを担当して、読書会を開催させていただきました。お題本はタイトルの通り星新一による『人民は弱し 官吏は強し』(新潮文庫)を選びました。現在図書館1階ブックウォールCで展開中の展示「—偉人から奇人まで— 伝記を読む!」との連動企画となっています。

学生、教員計6名で集まり様々な側面から和やかに議論しました。

本書は、タイトルの通り星一(星新一の父)が創業した星製薬に官憲が様々な口実をつけて妨害を行う話が延々と述べられているものですが、なぜ、そのような妨害が行われたかについても、幾つかの論点が出ました。例えば、主役は官僚ではなく、製薬業界内部での争いであるという指摘。また、星一が親しんだ政治家やドイツの科学界への大きな寄付などから、陸軍 vs. 海軍、関連して、ドイツvs. イギリスの影響ではないかという大局観に基づく説明。いずれも、社会科学に疎い私などにとっては、ただ感心、でした。

最も印象的だったのは、主人公の星一の人となりに対する評価として、ほぼ正反対の意見が提示されたことです。そのような全く違う他人の意見を聞くことが読書会(だけではないですね、ゼミなどでもそうでしょうか)の醍醐味ではないでしょうか。

さらに、複数の参加教員から関連本を提示して、お題本にひも付けた紹介がされました。たとえば、星新一のショートショートに見られる星一の考えの影響について、具体的な短編を例に引いた解説や、星一が面会に行ったことのあるエジソンについて、伝記の作者により評価が真っ向分かれることの紹介など。 本は芋づる式で読もう!


最後に最近恒例となっているようですが、Post-Itにそれぞれの感想を書き込んだものを集めて、お開きとなりました。しばらく後に、図書館入り口付近に掲示されると思いますので、ぜひご覧ください。

初めてこの様な集まりの取りまとめをさせていただいたため、はっきり言ってビビっていました。もし時間が余ったらどうしよう、などと思い、ひまネタを仕込んであったりもしたのですが、そのようなものを取り出して来るまでもなく、予定時刻を超えて議論が盛り上がって本当によかった。

12月にはさらに以下の2回の読書会を開催します。
12月8日 4時限 学長 堺憲一先生ご担当。お題本は有川浩 『フリーター、家を買う』。
12月16日 5時限 高津秀之先生ご担当。お題本は東浩紀 『動物化するポストモダン』。

ふるってご参加を。

前回の報告「ニーチェのアフォリズムに親しむ ―第八回読書会―