2015年1月9日金曜日

ブックトーク「恋する〈私〉を哲学する」

倫理学とフランス語担当の相澤伸依です。本日夕方、図書館ブラウジングスペースにてブックトークイベント「恋する〈私〉を哲学する」を開催しました。

選書展示「恋愛を考える」と連動して企画したこのイベント。ゲストとして、『なぜ、私たちは恋をして生きるのか』(ナカニシヤ出版、2014年)という本を出版された福岡大学の宮野真生子先生と、『図書新聞』(9月20日付け)で同書の書評を担当された駿河台大学の藤村安芸子先生をお招きしました。イベントでは、宮野先生から「恋する私は〈本当の私〉?」と題して本のエッセンスをご講演いただき、ゲストと参加者のみなさんを交えてディスカッションを行いました。

ご講演で、宮野先生はまず、漫画『NANA』を題材に、恋愛を通して「本当の私」を求めようとする私たちの有り様を指摘されました。そこから、「なぜ恋愛において『本当の自分』を求めてしまうのか」という歴史的問いと、「そもそも『本当の自分』とはなんなのか」という哲学的問いが提起されます。宮野先生は、近代日本の思想史と哲学者九鬼周造の言葉をヒントに、恋愛において「本当/作りものの自分」という区別自体の意味のなさを明らかにしていきます。そして、「本当の自分」という呪縛に抗して、変化する自分と他者を受け入れる強さの重要性を訴えられました。

講演に聴き入る人々。
頷くところもあれば、
新鮮な驚きもあり。
哲学と聞くと難しいと思われるかもしれませんが、宮野先生のお話は明快でとてもわかりやすい。ご講演後のディスカッションでは、フロアの学生から質問や意見が活発に出ました。「情報があふれる今の社会で、恋愛はますます難しくなるのではないか?」、「自己満足でない恋愛は可能なのか?」、「一人を選ぶ恋愛って残酷で哀しくないか?」など、鋭い指摘がたくさん出て、大変刺激的なディスカッションとなりました。

恋愛という身近な体験をテツガクした二時間。イベントの間に、参加者のみなさんそれぞれ、新たな発見があったようです。私自身、ご講演とディスカッションを通じて、様々な気付きがありました。イベントに参加した方、参加してないけど恋愛を考えてみようという方、宮野先生の『なぜ、私たちは恋をして生きるのか』をぜひ手に取ってみてください。