2022年6月29日水曜日

「教養入門」ゲスト講演 藤原辰史先生 「分解の哲学-『食べること』の文理芸融合的考察」

 自然の構造、教養入門ほか担当の榎です。6月22日(水)の1・2限の「教養入門」に、藤原辰史先生をお招きして、「分解の哲学-『食べること』の文理芸融合的考察」というタイトルで講演を行っていただきました。

 藤原辰史先生は、京都大学人文科学研究所の准教授で、歴史学、特に、農業史と環境史がご専門です。歴史学の専門家ですが、農業の技術や食べ物、環境問題などの理系的なこともかかわる分野の歴史の研究もされています。

 藤原先生の講演は、「分解」を通して「食べること」について考えるものでした。現代は、大量生産・大量消費社会ですが、この社会には大量の廃棄物が出るという問題があります。廃棄物が有機的なものであれば、ミミズや微生物といった生態系の「分解者」が食べて分解して自然に帰します。それを植物が取り込むことで、再び消費できる物が生産されるようになります。人間の「食べる」という行為も、摂取した有機物を「分解」して、排泄して自然に帰す、という意味では人間も「分解者」になります。この視点から、人間社会の在り方を見直し考察する講演でした。例えば、分解できないプラスチック製品の廃棄物の問題、生産者と消費者のみで分解者の視点がない現代の経済学の問題、ごみ処理をする人間社会の分解者の差別の問題、分解の副産物としての芸術、などなど様々なことを通して社会を見直して考えるものでした。しかも、特定の学問分野の枠に固定されない、文系的・理系的・芸術的なさまざまな視点で考えていく、大変興味深くて面白い講演でした。

 今回は、京都にいる藤原先生が講演したものをZoomでつないで、東経大の教室で視聴する、という形式で行いました。Zoomを通した講演でしたが、講演終了後の質疑応答の時に、学生さんからさまざまな意見・質問がなされ、それらにたいする藤原先生の回答も大変有意義なものでした。授業終了時に学生さんに書いてもらった感想には、それぞれの思いや考えが書き連ねられていて、講演が大きな刺激となったことが分かりました。

 教養入門は、3名の教員が交代で授業するリレー講義ですが、1回分の授業は、今回のように、東経大の外部からゲストの先生をお呼びして講演していただくという形式になっています。

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