2021年10月14日木曜日

英語アドバンストプログラム×国際交流講演会

 「英語アドバンストプログラム」を担当する小田登志子です。今日は「英語アドバンストプログラム」の授業を利用して行われた「国際交流講演会」についてご紹介します。

 「英語アドバンストプログラム」は選考によって選ばれた2年生以上の学生が履修するプログラムです。英語の授業が週に2回あり、1回はベルリッツ講師によるリスニング・スピーキングの授業、もう1回は本学講師によるリーディング・ライティングの授業を履修します。とてもまじめで熱心な学生が多いのが特徴です。

 今回はプログラム生の「腕試し」のために、 「英語アドバンストプログラム」 の授業が開講されている月曜日3時限の時間を利用して「国際交流講演会」を企画し、プログラム生が60名ほど参加しました。講師はパキスタン出身で小平市在住のラジ・アフマドさんです。講演は「Girls Education in Gilgit and Role of OLSS in Minawar(ギルギッドにおける女子教育とミナワーにおけるOLSSの役割)」と題して英語で行われましたが、一般参加者のために日本語の要約が加えられました。参加者は合計で約130名でした。

OLSS(Outliers Secondary School)Minawar, Gilgitの様子  写真提供:OLSS

 この講演の中で、講師のラジ・アフマドさんは、故郷のパキスタン北部ギルギット地方で行っている女の子のための学校支援について話してくれました。パキスタン・ギルギッド地方は美しい山々に囲まれ、世界中から登山客が訪れます。一方、女の子の教育の機会は限られています。ラジさんの故郷であるギルギッド・ミナワー村は伝統的な農村で、女の子は大きくなったら家の手伝いをしたり、結婚したりすることが期待されています。また、家庭に子どもを学校に通わせる余裕がない場合もよくあります。ラジさんはアメリカやマレーシアの支援者から寄付を募って2010年に女の子の教育を目的とした学校をミナワー村に設立し、10年以上にわたってボランティアとして学校の運営に携わってきました。小さな教室から始まった学校は今ではOLSS(Outliers Secondary School)に発展しました。secondary schoolはおおよそ日本の高校に相当します。

左:校舎の増築を手伝う村人 写真提供:OLSS
右:先生になってミナワー村に帰ってきたディルシャドさん 写真提供:OLSS

 最初のうちは、女の子のための学校を作ることに反対の村人もいたそうです。しかし、ラジさんたちボランティアは根気強く村人と話し合いました。そして、学校に親を招いて生徒の表彰式をしたり、祭日には生徒たちに家族と食べるための食糧を持たせたりしました。こうした長年の努力が実り、今では学校の増築を村人が総出で手伝ってくれるようになりました。また、OLSSを卒業してカレッジに進学し、ミナワー村に先生として帰ってきた女の子も現れました。今では、OLSSを卒業した女の子たちは皆カレッジに進学したいという夢を持つようになりました。かつて女の子には小学校5年生までしか就学の機会がなかったミナワー村は変わろうとしています。

 「教育こそが貧困を脱する手段なのです。そして英語はとても重要です。英語ができて初めて大学に進学することができ、良い仕事に就くことができるからです」とラジさんは言います。参考までに、パキスタンの大学では講義のほとんどは英語で行われます。OLSSの生徒たちは授業を英語とウルドゥー語で受けています。そして家庭では地元の言語であるシナ―語を話します。パキスタンではこのように公用語の英語、国語のウルドゥー語、そして地元の言語の3つを話す人がたくさんいます。

 この講演の質疑応答の際、プログラム生が果敢に英語で質問をしました。

プログラム生:マレーシアの人からの支援が多いのはどうしてですか?マレーシアとパキスタンのつながりは何ですか?

ラジさん:マレーシアの人はパキスタンのことをあまりよく知らないことが多いのですが、ムスリム同士だという共通点があります。

プログラム生:ラジさんがこのように熱心に活動する原動力は何ですか?

ラジさん:私自身の家庭にあります。私には女のきょうだいがいます。小さいころは一緒に学校に通いました。大きくなってからは、私には進学する機会があったのに、彼女にはありませんでした。彼女のほうがずっと優秀だったにもかかわらずです。女の子だからという理由で進学できないのはおかしいと思いました。

教室でラジさんと記念撮影  写真提供:国際交流課

 ラジさんが国分寺市国際協会の会員であることから、今回の講演には国際協会会員の方々が多数参加しました。感想を一部ご紹介します。

・国分寺市国際協会会員の方:日本でもまだ男女の格差は解消されていないが、パキスタンでもかなり深刻な格差があることに驚きました。その格差を教育の面から少しずつ解消しようと、学校の設立及び生徒の進学の手助けを行っていることに感動しました。講演会を聞いていて、自然と胸が熱くなるような感覚があり、私も少し視野を広げ、自分が知らないことについても少しずつ知っていきたいと感じました。

・国分寺市国際協会会員の方:パキスタンでは男性と女性で教育に差があったという状況から女子のための学校を作り、彼女たちの将来の道を広げるために尽力しているラジさんの活動が素晴らしいと感じました。特に午前中は学校で勉強をし、午後は裁縫の学校に通い、技術を身につけられる機会があるというのは彼女たちの可能性を伸ばす点でいいと感じました。

 ミナワー村のOLSSのケースはプログラム生にいろいろな問題について考えるきっかけを与えてくれたと思います。パキスタンと日本に共通する男女の格差はどうして根強く残っているのか?学校に行きたくても行けない子どもは日本にもいるのか?日本の大学生ももっと英語で授業を受けるべきなのか?

 これらは複雑な問いであり、簡単に答えが出るものではありません。「英語アドバンストプログラム」の教員も学生と共に考えていきたいと思います。そして、自分たちの在り方について考えるチャンスをくれる多様な人々との交流を今後も続けていきたいと考えています。

<関連サイト>

英語アドバンストプログラム

Outliers Secondary School Minawar Gilgit フェイスブック 

国分寺市国際協会